所得拡大促進税制について

賃上げ促進税制が今年度も改正されそうです。中小企業向けの「所得拡大促進税制」について、現行の制度と新しい制度に分けて、ご説明します。(昨年12月に出た大綱の内容に基づいています。今後の国会審議等によっては内容が変わる可能性があります)

■所得拡大促進税制とは?

中小企業が国内雇用者に対して支払う給与等の支給額の合計額が、前年度よりも一定割合以上増加した場合に、確定申告の際、その増加額をもととして計算した一定額を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度です。

給与等の支給額は、国内雇用者に対する給料、賃金、賞与などをいい、退職金は含まれませんので注意が必要です。また、役員に対する報酬は含まれません。

■現行

①適用期間

法人は、令和4年3月31日までに開始する各事業年度

個人事業主は、令和4年までに開始する各年

②適用要件

 雇用者全体の給与等支給額が前年度より1.5%以上増加

③税額控除の額

 雇用者全体の給与等支給額の増加額の15%

④上乗せ要件

 次のいずれかを満たす場合

 イ.教育訓練費が前年度より10%以上増加

 ロ.当期末までに経営力向上計画の認定を受け、経営力向上が確実に行われたことにつき証明がされたこと

⑤④の要件を満たす場合の税額控除の額

 +10%で、雇用者全体の給与等支給額の増加額の25%

⑥税額控除上限

 法人税額又は所得税額の20%が上限

■改正

①適用期間

法人は、令和4年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始する各事業年度

個人事業主は、令和5年から令和6年までの各年

②適用要件

 雇用者全体の給与等支給額が前年度より1.5%以上増加

 雇用者全体の給与等支給額が前年度より2.5%以上増加

③税額控除の額

 1.5%以上2.5%未満増加の場合、雇用者全体の給与等支給額の増加額の15%

 2.5%以上増加の場合、雇用者全体の給与等支給額の増加額の30%

④上乗せ要件

 教育訓練費が前年度より10%以上増加

⑤④の要件を満たす場合の税額控除の額

 +10%で、

給与等支給額1.5%以上2.5%未満増加の場合、雇用者全体の給与等支給額の増加額の25%

給与等支給額2.5%以上増加の場合、雇用者全体の給与等支給額の増加額の40%

⑥税額控除上限

 法人税額又は所得税額の20%が上限

■ポイント

①雇用者給与等支給額が1.5%以上増加した場合に受けられる制度から、1.5%以上、2.5%以上の二段階になりました。

②経営力向上計画の認定を受け証明がされた場合の上乗せ要件が、廃止されました。

③今までは、税額控除額の最大が25%でしたが、新制度は最大40%になりました。

■具体例(改正後)

既存従業員の給与等の増額、新規採用によって、給与支給額が前年度1200万円から当年度1500万円になった場合

①判定

 (1500万円-1200万円)÷1200万円=25%≧2.5% ∴適用あり

②税額控除

 増加額(1500万円-1200万円)×30%=90万円

 法人税額(所得税額)×20%を上限として、税額控除できる

■まとめ

所得拡大促進税制は、従業員に対する給与等を引き上げた企業、個人事業主にとって減税効果がある制度ですが、減税の効果は、1年経って確定申告の際に初めて感じられます。

さらに、給与等を支給したあと利益が思うほど伸びなかった場合は、期待していた減税の効果は薄れてしまいます。メリット、デメリットを知った上で、給与等の増額に取りくみたいものです。                                                        (岩崎)

参考:経済産業省 中小企業向け「賃上げ促進税制」(令和4年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始する各事業年度が対象)

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