一人親方 元請企業の注意点
長時間労働の規制逃れや社会保険料の削減などの目的から、従業員を一人親方として偽装する「偽装一人親方」が問題となっています。そのことから、国土交通省は、規制逃れを目的とした一人親方化防止対策、一人親方の処遇改善対策等の検討を行っています。また、建設現場における一人親方の業務上の災害も非常に多く発生しています。そこで、今回は一人親方の発注事業者である元請企業が注意する点について解説したいと思います。
目次
偽装一人親方とは
偽装一人親方とは、働き方の実態としては従業員と変わりがないのに、請負の形態で契約している状態の一人親方のことをいいます。
そうならない為にも、一人親方と適正な取引をすることが大切です。
まず、一人親方と社員の違いについて説明します。
社員は、会社の具体的な指示に従い、報酬は給与として毎月受け取ります。そして、働く時間や休日は、会社の就業規則などで決まっています。
それに対し、一人親方は、仕事の進め方や働く時間は自分の判断で決めることができます。
なので、仕事の進め方や働く時間を具体的に指示した場合は、一人親方ではなく社員とみなされる可能性があるので注意が必要です。
一人親方と元請の間における注意点
口頭での契約や報酬の減額は、建設業法令違反のおそれがあります。工事着工前に見積書を取り交わし、書面で契約しましょう。
さらに、以下のような契約も注意が必要です。
・報酬が労働時間、日数によって変動する
・契約金額に労災保険特別加入の費用や支給されない資機材等の必要経費等が含まれず、雇用されている同種の技能者と同額程度の報酬となっている。
安全及び健康の管理
2016年~2020年の5年間で463人の一人親方が亡くなっています。建設業の一人親方の死亡者数は毎年80人前後。事故の型別では「墜落・転落」の占める割合が約60%と最も高くなっています。しかし、被災者の約45%は労災保険に加入していなかったという調査結果があります。
このような事故を無くすため、元請企業が一人親方を管理する際に安全及び健康の管理を推進することが大切です。
元請が一人親方を管理する際には、一人親方の就労状況の把握をしたり、混在作業における災害を防止するために作業間の連絡及び調整を行ったり、安全指示や注意事項を伝え、不安全な作業が行われていないか確認したりする必要があります。安全管理を徹底することで事故をなくすことが大切です。
また、万が一の事故の際に確実な補償を受けられるように、労災保険に特別加入していない一人親方の実態を把握し、加入への積極的な推進をしましょう。
まとめ
現場管理する元請企業と一人親方で適正な取引を行い、また、事故が起こらないような取り組みを積極的に行うことが大切です。
建設業労災センターでは、一人親方労災保険の団体での加入も取り扱っております。気軽にご連絡ください。
お申込み・お問い合わせ先 建設業労災センター TEL:0120-642-050
参考資料
「みんなで目指すクリーンな雇用・クリーンな請負の建設業界」(出典:国土交通省)
「建設業の一人親方等を管理する事業者のみなさまへ」(出典:建設業労働災害防止協会)