一人親方 労災保険とは
事業主や会社の役員、一人親方等は仕事中の怪我や障害に対しての補償がありませんが、そのような方々を対象に、国から労災保険の特別加入への窓口が設けられています。今回は、一人親方の労災保険についてわかりやすく解説をしたいと思います。
目次
労災保険とは
労災保険(正式には労働者災害補償保険と言います。)は会社などの事業主に雇われた「労働者」の業務上での事故や怪我に対しての補償を目的としている制度です。例えば、労働者が業務上の怪我をして病院にかかった時は、労災保険から補償が出るため、基本的に窓口でお金を支払う必要はありません。このように、労災保険は「労働者」を補償する制度のため、自身が事業主である「一人親方」は労災保険の対象にはなりません。しかし、建設業の一人親方などは、業務災害にあってしまう可能性は通常の労働者と変わらないため、国は特別に労災保険の加入を認めています。
特別加入者の範囲
一人親方とは労働者を雇用せずに自分と家族などだけで仕事をしている事業主を指します。次の1~8の事業を行っている一人親方が労災保険に加入できます。
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- 1.自動車を使用して行う旅客もしくは貨物の運送
- 2.建設の事業
- 3.漁船による水産動植物の採捕
- 4.林業
- 5.医薬品の配置販売
- 6.再生利用の目的となる廃棄物などの取集、運搬、選別、解体等
- 7.船員
- 8.柔道整復師
令和3年9月1日より特別加入の対象が広がりました。Uber eatsの様な自転車による宅配やITフリーランスの方々もご加入いただけます。
保険給付の内容
労災保険に特別加入することにより、次の補償を受けることができます。
- 療養補償給付
業務または通勤による病気やけがについての療養に必要な治療費は、基本的に無料です。
- 休業補償給付
業務または通勤による病気やけがのため労働することができない場合、休業4日目から休業補償され、※給付基礎日額の約60%が休業1日につき支給されます。
- 障害補償給付
ケガの後遺症などが残った場合、その程度により年金又は一時金が支給されます。
- 傷病補償年金
療養開始後1年6か月が経過しても治らない、又は傷病等級に該当する場合は、その程度に応じて年金又は一時金が支給されます。
- 遺族補償給付
業務または通勤による病気やけがにより死亡した場合、特別支給金と遺族の人数に応じた遺族年金が支給されます。
- 葬祭料
業務または通勤による病気やけがにより死亡し葬祭を行う場合に給付基礎日額に応じた給付金が支給されます。
- 介護補償給付
業務または通勤による病気やけがで障害(補償)等年金か傷病(補償)等年金を受給していて、一定の障害があり介護を受けている場合、介護の費用が支給されます。
※給付基礎日額とは
給付基礎日額は、休業(補償)給付などの給付金を決定する基礎となるものです。給付基礎日額は加入者が決めることができ、その額に応じて保険料も変わります。給付基礎日額が高いほど、休業補償給付などの支給額も高くなりますが、治療費や介護保障給付については給付基礎日額の金額に左右されません。
加入時に健康診断が必要な方
一人親方で労災保険に特別加入される方の中で、下記の業務にそれぞれの期間を超えて業務を行った事がある場合は、特別加入の際に健康診断を受ける必要があります。
業務の種類 | 従事した期間(通算) | 必要な健康診断 |
粉じん作業を行う業務 | 3年以上 | じん肺健康診断 |
振動工具使用の業務 | 1年以上 | 振動障害健康診断 |
鉛業務 | 6カ月以上 | 鉛中毒健康診断 |
有機溶剤業務 | 6カ月以上 | 有機溶剤中毒健康診断 |
一人親方の労災保険に加入するには
一人親方の労災保険は直接労働局で手続きする事はできません。一人親方の労災保険への加入は労働局から認可を得た『労働保険事務組合』を通じてしかできないからです。なのでまず、労働保険事務組合への加入が必要です。
一人親方として働いている間に運悪くけがを負ってしまった時、病院での治療代が高額となってしまいます。そんな時、一番安心して補償を受けられるのが国の労災保険です。最近は「労災保険に加入していない一人親方を現場に入れない」という元請さんも増えています。まだ労災保険へ未加入のようでしたら加入を検討されてはいかがでしょうか。